平成30年度宅地建物取引士試験を振り返る第3回目です。
3回目になりましたが、大変なことをやり始めたなと思っています。が、後悔しても仕方がないので前を向いていきます。
第3問はこんな問題でした。
問3 AとBとの間で、5か月後に実施される試験(以下この問において「本件試験」という)にBが合格したときにはA所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した(以下この問において「本件約定」という)。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例 によれば、誤っているものはどれか。
1.本件約定は、停止条件付贈与契約である。
2.本件約定の後、Aの放火により甲建物が滅失し、その後にBが本件試験に合格した場合、AはBに対して損害賠償責任を負う。
3.Bは、本件試験に合格したときは、本件約定の時点にさかのぼって甲建物の所有権を取得する。
4.本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件試験に合格しても、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。
では見ていきましょうか。
選択肢1番、贈与契約の停止条件が成就(5か月後に実施される試験に合格)すれば、贈与がなされるということですので、読んでそのとおりです。これはいいでしょう。「正しい」です。
選択肢2番にいきましょう。約定後、Bの試験合格により停止条件が成就しましたので、AはBに甲建物を贈与しなければいけません。しかし、その時にはすでにAが自身の放火により甲建物を滅失させてしまっていたというのです。
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」(民法415条)とありますので、甲建物を贈与しなければならない債務を負っているAが自身の責めに帰すべき事由により債務を履行することができなくなったのですから、債権者のBはAに対して損害賠償を請求できます。
選択肢2番は「正しい」です。
続いて選択肢3番です。これについては、「停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。」(民法127条1項)とありますので、約定のときまで遡って甲建物の所有権を取得することはありませんね。
選択肢3番は「誤り」です。
ラスト、選択肢4番です。
「意思能力を欠くものがした取引行為は無効である」(大審院明治38年5月11日判決)とあります。約定の時点でAに意思能力がないのですから、約定は無効ということになりますね。したがって、Bが試験に合格しても甲建物の所有権を取得することはできません。
選択肢4番は正しいです。
この問題は、「誤っているもの」を選ぶのですから、正解は3番です。
この勢いで問4を見ていきましょう。問4は、こんな問題でした。
問4 時効の援用に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1.消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。
2.後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
3.詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。
4.債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。
まず、選択肢1番から見ていきましょう。「保証人は主債務の消滅時効を援用できる」(大判大正4年7月13日)とされています。また、「主たる債務者がなした時効利益の放棄は,(連帯)保証人に対しては効力が生じないので,保証人は時効を援用することができる(大判大13年12月25日)とありますので、選択肢1番は「正しい」ですね。民法146条を参照してください。
選択肢2番、「後順位抵当権者は先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できない」(最判平成11年10月21日)とされていますので、選択肢2番は「誤り」です。民法145条,民法369条,民法373条1項 も参照してください。
選択肢3番、「詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権の消滅時効を援用することができる。」(最判平10年6月22日)とありますので、選択肢3番は「正しい」です。 民法424条も参照してください。
選択肢4番、「債務者が、消滅時効が完成した後に債務を承認した場合、承認した時点において債務者が時効完成の事実を知らないときでも消滅時効を援用できない。」(最判昭41年4月20日)旨の判例がありますので、選択肢4番は「正しい」です。民法146条も参照してください。
問4は、「誤っているもの」はどれかとありますので、正解は選択肢2番です。この問題は、私には難しすぎました。
問4は、条文を飛ばしましたが、参照条文を記載しておきました。第3回は終了です。