平成30年度宅地建物取引士試験を振り返る第33回です。
問37 宅地建物取引業者である売主Aが、宅地建物取引業者Bの媒介により宅地建物取引業者ではない買主Cと新築マンションの売買契約を締結した場合において、宅地建物取引業法第37条の2の規定に基づくいわゆるクーリング・オフに関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア.AとCの間で、クーリング・オフによる契約の解除に関し、Cは契約の解除の書面をクーリング・オフの告知の日から起算して8日以内にAに到達させなければ契約を解除することができない旨の特約を定めた場合、当該特約は無効である。
イ.Cは、Bの事務所で買受けの申込みを行い、その3日後に、Cの自宅近くの喫茶店で売買契約を締結した場合、クーリング・オフによる契約の解除はできない。
ウ.Cは、Bからの提案によりCの自宅で買受けの申込みを行ったが、クーリング・オフについては告げられず、その10日後に、Aの事務所で売買契約を締結した場合、クーリング・オフによる契約の解除はできない。
エ.クーリング・オフについて告げる書面には、Bの商号又は名称及び住所並びに免許証番号を記載しなければならない。
1.1つ
2.2つ
3.3つ
4.なし
まず、関係条文を見ましょう。
宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。(宅地建物取引業法第37条の2)
一 買受けの申込みをした者又は買主(以下この条において「申込者等」という。)が、国土交通省令・内閣府令の定めるところにより、申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合において、その告げられた日から起算して八日を経過したとき。
二 申込者等が、当該宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払つたとき。
(同条2項)申込みの撤回等は、申込者等が前項前段の書面を発した時に、その効力を生ずる。
(同条3項)申込みの撤回等が行われた場合においては、宅地建物取引業者は、申込者等に対し、速やかに、買受けの申込み又は売買契約の締結に際し受領した手付金その他の金銭を返還しなければならない。
(同条4項)前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
次に上記の「事務所等」というのはどこを指すのでしょうか。宅地建物取引業法施行規則第16条の5を見てみましょう。
法第三十七条の二第一項の国土交通省令・内閣府令で定める場所は、次に 掲げるものとする。
一 次に掲げる場所のうち、法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地 建物取引士を置くべきもの
イ 当該宅地建物取引業者の事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができる施 設を有するもの
ロ 当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲を案内所(土地に定着する建物内 に設けられるものに限る。ニにおいて同じ。)を設置して行う場合にあつては、そ の案内所
ハ 当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、宅地又は建物の売却につ いて代理又は媒介の依頼をした場合にあつては、代理又は媒介の依頼を受けた他の 宅地建物取引業者の事務所又は事務所以外の場所で継続的に業務を行うことができ る施設を有するもの
ニ 当該宅地建物取引業者が一団の宅地建物の分譲の代理又は媒介の依頼をし、かつ、 依頼を受けた宅地建物取引業者がその代理又は媒介を案内所を設置して行う場合に あつては、その案内所
ホ 当該宅地建物取引業者(当該宅地建物取引業者が他の宅地建物取引業者に対し、 宅地又は建物の売却について代理又は媒介の依頼をした場合にあつては、代理又は 媒介の依頼を受けた他の宅地建物取引業者を含む。)が法第三十一条の三第一項の 規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべき場所(土地に定着する建物内 のものに限る。)で宅地又は建物の売買契約に関する説明をした後、当該宅地又は 建物に関し展示会その他これに類する催しを土地に定着する建物内において実施する場合にあつては、これらの催しを実施する場所
二 当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物 の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあつては、その相手方の自宅又 は勤務する場所
とあります。
問題を解くにあたり、
①買受の申込みの場所が事務所等にあたるか否か
・事務所にあたる場合アウト
・事務所にあたらない場合セーフ
②申込みの撤回等を行うことができる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げられた場合その告げられた日から起算して八日を経過しているか否か
・八日を経過している場合アウト
・八日を経過していない場合セーフ
③宅地又は建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払ったか否か
・建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払った場合アウト
・建物の引渡しを受け、かつ、その代金の全部を支払っていない場合セーフ
このあたりを中心に見ていけばいいのでしょうか。
選択肢アです。
規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とするとありますので、選択肢アは「正しい」です。
選択肢イです。
Cは、Bの事務所で買受けの申込みを行いとありますので、この時点でアウトです。選択肢イは「正しい」です。
選択肢ウです。
「Cの自宅で買受けの申込みを行った」→アウトとしてはいけません。引っ掛け選択肢です。「『Cは、Bからの提案により』Cの自宅で買受けの申込みを行った」とあります。Cが自ら提案して自宅で買受の申込みを行ったならばアウトですが、Bの提案ですから事務所等にあたりません。セーフです。
次に「その10日後に、Aの事務所で売買契約を締結した」→アウトとしてはいけません。引っ掛けです。「クーリング・オフについては告げられず」とありますので、何日経過しようとクーリングオフができます。セーフです。
契約解除できますので、選択肢ウは「誤り」です。
選択肢エです。
(宅地建物取引業)法第三十七条の二第一項第一号の規定により申込みの撤回等を行うことが できる旨及びその申込みの撤回等を行う場合の方法について告げるときは、次に掲げる 事項を記載した書面を交付して告げなければならない。(宅地建物取引業法施行規則第16条の6)
売主である宅地建物取引業者の商号又は名称及び住所並びに免許証番号(同条3号)
とあります。Aの商号又は名称及び住所並びに免許証番号は必要ですが、Bのそれは必要ありません。
選択肢エは「誤り」です。
この問題は「正しい」ものがいくつあるかということですので、2の「2つ」が正解です。
このブログの当該シリーズについては、正しさを保証するものではありません。